肯定し合える世界を京都から。
京都×ヴィーガンという新しい価値観を伝える事業の開発とデザイン

- Project Information :
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「KYOTOVEGAN」事業開発・クリエイティブディレクション
- Date :
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Mar 2024
- Client :
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合同会社KYOTOVEGAN
プロジェクト概要
Outline
肯定しあえる世界を京都から
『数ある選択肢からヴィーガンを選ぶことも認め合えて、ライフスタイルの多様性が肯定される世界を京都から実現する。』
動物由来の食べ物や衣類などを選ばず、植物由来のものを暮らしに取り入れるライフスタイルであるヴィーガン(Vegan)。欧米の都市部ではレストランで植物性の選択肢が当たり前になるほど身近な考え方となっており、京都においても多様なかたちのヴィーガンが生まれています。
KYOTOVEGANは、自然や他者を大事にし命を尊ぶ日本的な価値観と、特に自然とともに人と文化が調和し、古いものと新しいものが溶け込む京都の生活様式、その姿勢や感性をヒントに、ヴィーガンを通してどんな人も肯定される、世界で最も寛容な“京都発のヴィーガンカルチャー”を育てることを目指しています。
株式会社マガザンはそのパートナーとして、事業開発のサポート、ヴィジョン・ミッションの言語化、中長期的なステップイメージの共有、その世界観を伝えるためのWEBサイトの制作に関わりました。

プロジェクトの背景
Background
「もう1つの選択肢」としてのヴィーガン
KYOTOVEGANのはじまりは、代表の玉木千佐代さんが、2016年のある日に外国人観光客のご家族からヴィーガンレストランがどこにあるか尋ねられたことでした。意味を教えてもらい、居酒屋の冷奴やトマトスライスなどを案内したところ、そのご家族はとても喜びお礼を言われました。その原体験から京都の「VEGAN」カルチャーを探してSNSにアップする活動をするようになり、そこから実は京都の衣・食・住・遊のなかにはヴィーガンなものが「文化」として根付いていることに気づいたのです。
これらの京都ならではの文化的背景を、様々なシーンから切り取り、豊かな未来へと紡いでいく活動をしていきたいという思いから、玉木さんは2020年3月1日に合同会社KYOTOVEGANを立ち上げます。「ヴィーガン/精進」という当時は新しかった切り口で京都を切り取り、見せていくことにはじまり、ヴィーガンの生活スタイルを社会や暮らしの中に取り入れることが、これからの未来の課題解決として有効な手段であると提示すること。特に、「京都議定書」によって世界で初めて地球温暖化対策についての国際的な約束を掲げた都市・京都での活動だからこそ、持続可能な地球環境の実現に向けては官民が一緒に行動することが重要だと、KYOTOVEGANは考えていました。
そうしたより豊かで調和的な「もう1つの選択肢」としてのヴィーガンを世の中に提案していく活動を本格化していくうちに、その輪はおのずと大きくなっていきました。それまで行ってきたことの情報整理と発信をおこない、活動内容をより広く有機的につなげるスキームを可視化したいという思いから、サイトをリニューアルすることになりました。
プロジェクトのチーム
Team
- プロジェクトオーナー:玉木 千佐代(KYOTOVEGAN 代表)
- クリエイティブディレクター:岩崎 達也(株式会社マガザン)
- プロジェクトマネージャー、ディレクター:藤本 淳弥・榎 藍香(株式会社マガザン)
- ウェブデザイナー:井上 みなみ(株式会社マガザン)
- コーダー:芳崎 誉(株式会社LINKAKU代表)
- コピーライター:深澤 冠
- フォトグラファー:原 祥子
- コーディネーター: 前田 展広(株式会社よい根 代表取締役 / SILKフェロー)
- ツアー開発: 藤本 直樹(株式会社JTB京都支店 事業開発室(LINK KYOTO))
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岩崎 達也
代表取締役 / 編集長
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藤本 淳弥
シニアマネージャー / ディレクター
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榎 藍香
ディレクター / シンガー
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井上 みなみ
シニアデザイナー / フォトグラファー
プロジェクトのプロセス
Process
KYOTOVEGANらしさの言語化
これまでにやってきたことを整理してみると、ヴィーガンレストランの紹介はもちろん、旅行会社とのウォーキングツアーの共同開発、ヴィーガンにまつわる商品やサービスのつくり手や担い手のマッチングやチーム開発など様々な取り組みがありました。「ヴィーガンという考え方を理解する人を増やし、その輪を健やかに広げることでより良い暮らしを実現する人を増やす取り組み」と捉え、ヴィーガンに対する世間とのイメージギャップを埋めることを目指すためのアプローチを探っていきました。
ターゲットは、ヴィーガンに興味を持っている人や企業、情報の需要がある人や企業。そして国内外のヴィーガンライフスタイルを取り入れている人実践者や、環境問題に関心のある第一次産業の人々や企業。そうした方々にKYOTOVEGANの輪に入っていただくために、まず最初に事業のステップを可視化することを行いました。
中長期的の事業ステップイメージ
そしてそのイメージから、事業(サービス)を「コンサルティング」「PRサポート」「セミナー・講演」「ツアー開発」に分類。そしてそれらをつなぐ担い手のネットワーキングとして、ヴィーガンのお店紹介にとどまっていた既存の「メンバーシップ」制度を、よりKYOTOVEGANのミッションに共感するメンバーが集うことのできるものにアップデートした会員制のコーディネートサービスを実装することで、事業運営の基盤整備のサポートを行いました。
そうして可視化された事業をどう伝えるかというコンセプトメイキングにおいては、旧来のヴィーガンカルチャーとの相対化をおこないながら、コピーライター(深澤さん)によるコピーライティングを施すことで、「KYOTOVEGANらしさ」を共通言語にしていくプロセスを採りました。

プロジェクトのディティール
Details
ヴィーガンを取り巻く社会的イメージには、時に厳格で排他的なものという印象も少なからずあるかもしれません。KYOTOVEGANは、「ちょっとやってみる」その気持ちを大切に、京都が元来持っている寛容さと紐づけて「数ある選択肢からヴィーガンを選ぶことも認め合えて、ライフスタイルの多様性が肯定される世界」としてのヴィーガンを提示しています。
WEBサイトのデザインにもその「らしさ」を落とし込むことで、世界観のイメージを形成し、関係人口の裾野拡大や共感の輪を広げていくことが可能になります。そうして間口を広げ、幅広い人に見てもらう、興味を持ってもらうところからはじまり、コンテンツを通じてKYOTOVEGANが現在考えていることや、KYOTOVEGANが定義する”ヴィーガン”を発信することで、有益なインプットができるサイトになることを目指しました。
デザインコンセプトは
「豊かな余白」
「京都のエッセンス」
「グローバル」
KYOTOVEGANという新しい考え方を提案するプロジェクトとして、安心感、使いやすさ、信頼できる印象を担保しながら、日本語のみならずインバウンドユーザーも視野に入れた日英併記対応を想定したデザインとしています。



プロジェクトの成果
Results
KYOTOVEGANの世界観をまっすぐ伝えるデザインと、京都のプラントベースの食、体験をまとめたマップの実装、様々な方々の取り組みや商品・サービスなどを紹介するコラムなどをサイトに装着し、KYOTOVEGANの多様で有機的な取り組みを総合的に紹介して「INCLUSIVE VEGAN from KYOTO」という価値観を多角的に見せることができるようになりました。またその展開として、あらたに開発されたツアー内容に応じたチラシのデザインテンプレートもWebデザインの世界観を踏襲したものに更新しました。
そしてアップデートしたメンバーシップの会員は京都のヴィーガンを支える多彩な顔ぶれが集い、京都のヴィーガンにおける生態系がこのWEBサイトを通じてインクルーシブに可視化されるようになりました。その結果海外からの問い合わせや実際の来訪者、ヴィーガンに興味を持ちはじめた若い人たちからのアクションも増え、その輪は今もゆるやかに広がりつづけています。


プロジェクトメンバーの声
Member's Voice
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(01)
藤本 直樹さん
株式会社JTB京都支店 事業開発室(LINK KYOTO)
京都へのインバウンド観光の急増に伴い、多様な食習慣を持つ来訪者が増えています。その中で、ヴィーガン対応を行うことが、あらゆる食習慣を持つ人々を包括するアプローチとなるため、KYOTOVEGANと連携した「ヴィーガンツアー」の開発を行いました。
このツアーは単なる菜食対応型のツアーではなく、KYOTOVEGANらしさを活かすことで差別化を図りました。そのために、KYOTOVEGANの特性を言語化することが非常に重要なプロセスとなりました。
自然や他者を尊重し、命を大切にする価値観、そして特に自然と共に人と文化が調和し、古いものと新しいものが融合する京都の生活様式が京都らしいヴィーガンであり、すなわちKYOTOVEGANらしさであると言えます。WEBサイト構築プロセスの言語化を通じて、京都に根ざした「文化観光」としての「ヴィーガンツアー」を提供する視点を得ることができました。 -
(02)
前田 展広さん
株式会社よい根 代表取締役 / SILKフェロー
2019年の「京都・地域企業応援プロジェクト」での事業開始時の相談担当だった縁から、「京都市脱炭素ライフスタイル京創ミーティング」へのお誘いし、JTB京都支社の藤本氏の観光庁予算申請の応援を受け、ツアー造成やホームページのウェブリニュアルが進みました。マガザンさんのコンセプトメイキングをはじめとしたクリエイティブは「さすが!」の一言でした。こうでなければならないといった厳しさの訴求ではない肯定的な選択提案は、KYOTOVEGANの今後の展開において重要な機能を発揮していくのだと思います。業界向け勉強会資料でも、参加された企業や支援団体の方々にも伝わり、早速様々な連携の話が立ち上がっているようです。今後もKYOTOVEGANが多くの人たちに伝わることを期待しています。
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