事業開発・クリエイティブディレクション

事業開発・クリエイティブディレクション

切迫した水産資源にまつわる社会課題にコミットする。次世代向けプログラムのコミュニケーションデザイン

プロジェクト概要

Outline

切迫した水産資源にまつわる社会課題にコミットする。次世代向けプログラムのコミュニケーションデザイン

四方を海に囲まれた島国である日本は、長い間、海の営みとともに生きてきました。その美しく豊かであったはずの海が、いま急速に魚が減っているという大きな危機に瀕しています。そうした水産資源のサステナビリティという社会課題に対して、私たちには何が必要で、何ができるのか。そのひとつの解として、若者のためのプログラム、THE BLUE CAMPは立ち上がりました。

THE BLUE CAMPは、夏季3ヶ月間の学生(高校生、専門学校生、大学生)向け学びと実践のプログラム。海と食の未来を担う次世代をターゲットに、漁業現場から食卓までの一連の学びと、トップシェフの徹底伴走によるシーフードレストランづくりという実践を通じて、どこから考えればいいのかわからない海のSDGsに取り組むことができます。

株式会社マガザンはそのパートナーとして、プログラムコンセプトの言語化、VI策定(ロゴ、カラー、フォント、サウンドロゴ)、PRツールデザイン(PR映像・サウンド制作、Instagram投稿画像デザイン)、第1期・第2期受講生募集のためのWEBサイト制作に関わりました。

プロジェクトの背景

Background

わたしたちの食卓に直結する海の窮状をサプライチェーン全体で解決する

日本の食文化は、昆布やかつお節等からつくる”出汁”をはじめ、豊かな海の恵みである水産物に支えられて発展してきました。しかし現在では、過去30年以上にわたり、日本の海の生産量は減少の一途をたどっています。豊かな海を取り戻すため、国は環境再生の取り組みとともに、2020年には科学的な根拠に基づき数量管理をしながら漁獲する方針に転換しました。

こうした海の窮状や水産改革については、ほとんど知られていません。その背景には、複雑な流通システムのなかで生産地と消費地の心の距離が離れてしまい、関心が薄れてしまっていることがあります。しかし実際は、海の危機は魚を食べる人みんなの「自分事」であるはず。漁業現場のチャレンジを、その先に連なる流通、小売、レストラン、消費者といったサプライチェーン=社会全体が支え、問題に真剣に取り組まなければ、私たちの未来の食卓から本当に魚が消えるかもしれません。

そうした切迫した社会課題に真剣に向き合う有志として集ったのが、このプログラムを主催する、海の未来を考えるトップシェフチーム『Chefs for the Blue』です。2017年よりイベントやプロジェクトを通じて、水産物の持続可能な生産・消費スタイルへの移行を社会に訴えてきました。

レストランは生産者、流通、消費者のそれぞれとダイレクトにつながることができる、つまりサプライチェーンの輪が小さく完結する特別な場所です。飲食業界志望者にとどまらず多くの若者にとって、食の世界の最前線にいるトップシェフやジャンルを超えて集まる講師・メンター陣との3ヶ月間の学びが、さまざまな角度から自分なりの海の課題解決を目指す最初の一歩として機能し、彼らの手によって未来の状況が変わっていくことを期待しています。

プロジェクトのチーム

Team

  • クリエイティブディレクション:岩崎達也(株式会社マガザン)
  • プロジェクトマネジメント、ディレクション:藤本淳弥、武田真彦(株式会社マガザン)
  • コピーライティング:榎藍香、武田真彦(株式会社マガザン)
  • デザインディレクション、ロゴ&ウェブデザイン:井上みなみ(株式会社マガザン)
  • ツールデザイン:井上みなみ、古山愛子(以上株式会社マガザン)
  • サウンドデザイン:武田真彦(株式会社マガザン)
  • 1期動画撮影、編集:三輪恵大 Instagram
  • 1期写真撮影:山根香 Instagram 、三輪恵大
  • 2期動画編集:古山愛子(株式会社マガザン)
  • ウェブ開発:芳崎誉 Instagram
  • 岩崎 達也

    代表取締役 / 編集長

  • 藤本 淳弥

    シニアマネージャー / ディレクター

  • 武田 真彦

    プランナー / サウンドデザイナー

  • 井上 みなみ

    シニアデザイナー / フォトグラファー

プロジェクトのプロセス

Process

理知だけでもなく、熱さだけでもない。両者を兼ね備えたプロジェクトの表情を表現

THE BLUE CAMPのカリキュラムは大きく4つの要素で構成されています。東京と京都の2会場で開催し、すべてのプロセスをメンターとなるトップシェフと探究型教育の専門チームが徹底伴走します。

Step 1 オンライン講座
Step 2 産地フィールドワーク(漁港視察)
Step 3 レストラン研修
Step 4 ポップアップ レストラン

そしてこの場をきっかけに、業界を横断して日本の海と食の未来をつくるための実践型のコミュニティを立ち上げます。新たなチャレンジや情報共有の機会創出のため、Chefs for the Blueが若者の活動をサポートしていきます。

プロジェクトのプロセス

Process

マガザンはこのプロジェクトの初年度である2023年度から継続してWEBサイト等の制作を担当しています。このプロジェクトの目標は、シェフを志す人だけでなく海に対する問題意識の高いいろんな人材を集めることで、彼らの関心と行動変容を促し、新たなコミュニティを醸成すること。クリエイティブにおいても、そのメッセージを熱量を持って、かつ子供扱いせずに本気のトーンで伝えることを大切に、デザインやライティングのコンセプトに落とし込んでいきました。

クリエイティブコンセプトは「理知的な熱」「青い炎」。火が最大の効率で燃えるときは青くなる現象から着想し、理知的でありながら熱いというプロジェクトの想いを込めて、ブランドカラーをブルーとしました。哲学・思想・相互理解などを携えて未来と向き合う若者をターゲットに、ユーザーに海の窮状という問題提起とありたい未来、そこを変えることに自分たちも貢献できる希望と機会を伝えることをイメージしました。

また初年度は伴走するシェフへのインタビューも多数実施。映像として生の声を収録し、プロジェクトへの熱意をより身近に参加者に語りかけることを意識しました。

https://note.com/the_bluecamp/n/n2369d11bce3e

https://www.youtube.com/@chefsfortheblue

参加者募集のプロモーション動画に使用されているサウンドは、プロジェクトのコンセプトに呼応して、食材を切っている音を採用しています。

SNSにおいてはWEBデザインに準じた形でクリエイティブを制作し、自走化までをフォロー。またアドバイザリーとして加わったクラウドファンディングは、無事目標金額を達成することができました。

https://www.instagram.com/the_bluecamp/

https://camp-fire.jp/projects/view/672385

プロジェクトの成果

Results

初年度の応募総数は42件集まり、選考を経て16名の学生がプログラムに参加しました。加えてシェフ4名+講師4名(水産庁、経営者、アカデミア、NGO)+水産関係者7名+コーディネーター7名+事務局2名というコミュニティが立ち上がり、研修の最後のアウトプットとしておこなうポップアップレストランには2会場で231名もの来場がありました。

プロジェクトの成果

Results

マスメディアからの反響も大きく、新聞や業界紙、ライフスタイルメディアなどさまざまな媒体に情報を掲載いただき、プロジェクトへの注目度の高さを可視化することができました。

そして何よりも蓄積されたのは、実際の参加者たちの表情豊かな写真や、熱いコメントの数々。

「考える美味しさを知った」

「料理で何かを捨てるときに、ふと立ち止まるようになった」

「身近なことが今までとは違う見え方に変わったことに自分で驚いた」

「漁業の現状、そして課題に対する各々の向き合い方を実際に体感し、日々の生活で魚を見るたびに「この魚はどのようにして獲れたんだろう?適切な獲り方だろうか?今買うべきなのか?」と考えるようになりました。」

「水産物の認証制度などの既に知っているつもりのものでも、立場の違う人から聞くとこれまで知らなかった側面が見えてくるということも多くありました。自分の視野はまだまだ狭いと思い知らされたし、色々な人に話を聞くことの大切さを実感しました。」

参加者にたくさんのリアルでエモーショナルなテキストを残してもらえたことで、主催側も改めてこのプロジェクトの意義と可能性に確信を抱くことができました。これらをより次年度からのPRに活かすべく、2年目はよりプロジェクトの内容や参加者の声をしっかりそのままの温度で伝えられるような情報構成のサイトに仕上げました。

そしてこのプロジェクトの開催を通じ、豊かな海の未来に寄与する次世代を育てられるよう飲食店をアップデートすること。レストランでの体験を通じて、幅広い方に海の学びを共有すること。そこからの波及効果が水産業界の課題解決につながり、業界を横断して日本の海を支え活かすコミュニティを形成してインパクトを拡大していくこと。これらのサイクルによって少しずつ海の未来が変わっていくことを見据えて、今もTHE BLUE CAMPの活動は続けられています。

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