2017.05.15

マガザンキョウト編集長コラム

インテリア特集編集途中記

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共同編集者として「取っ手」を作る大貫茜さんと出会ったのは2年ほど前、偶然集まったメンバーで行った四条烏丸の居酒屋だった。

酔いもあって彼女のことをすっかり忘れてしまっていた私(失礼)は、後日、アーティスト名和晃平氏の運営するアトリエ「SANDWICH」に仕事で伺った際に、そこで働いていた彼女に声を掛けられることで記憶を取り戻した。キュートな笑顔と微笑ましい滑舌(失礼)に油断すると、色々を見透かされてしまいそうな聡明さも併せ持っている、そんな印象をその時に思い出した。

 

「日常にあるモノを取っ手へ置き換える作品を作っている」という彼女の話を聞いて、作品も見せてもらい、マガザンキョウト開業時に玄関ドアの取っ手の制作をお願いした。アルミ鋳造でできたゴマ擦り器の形をしている「OPEN THE SESAMI 〜開けゴマ〜」というこのドアノブ取っ手は、訪れるお客さまを戸惑わせた後にくすっと笑わせ、取っ手をこれでもかと触らせる、不思議な力を持った一品だ。

 

「これらの取っ手はアートではなく、デザインです。」と彼女は言う。

前回のアート特集のように、余白を大きく用意して作り手に委ねると言うよりは、充分なディスカッションの中から課題を明らかにし、その解決策となる取っ手と箱をつくっていくというアプローチを今回は取っている。その流れはまさにデザイン的でありつつ、使い手に気づきと違和感を与えるというアート的な要素も持ち合わせていると思う。

 

一方の「箱」を担当する共同編集者、井ノ口志麻さんは、大貫と同じくSANDWICHで働いていた木工作家であり、マガザンキョウトのスタッフでもある。

大貫さんの紹介で出会った10歳ほど若く見られる小柄な彼女は、今回、箱づくりを担当している。

 

箱の大きさ、開け方、素材を、取っ手とのマリアージュが生まれるように仕立てていくことで、箱の中身が気になる→触りたくなる→取っ手に触れる→開ける→中を確認し取り出す→閉める、という一連の行動をデザインする。

 

日々どこにでもあって、開けては閉められる箱とのコミュニケーションを見直すことにチャレンジするインテリア特集。ファーストデリバリーの作品が揃った後は、マガザンキョウトの各所にある取っ手をジャックしていく予定だ。

 

お泊まりの方も泊まらない方も、そこかしこにある取っ手と箱の関係性を愉しんでいただければと思う。

マガザンキョウト編集長
岩崎達也