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物流特集 共同編集者インタビュー | 物流が届けられるのは「物」だけじゃない。 「心」だって届けられる。

インタビュー・文 / 土門蘭
撮影 / 井上みなみ

 

 

「会いたいけれど、どうしても会えない。

でも、ありがとうやおめでとうをちゃんと伝えたい。

その想いをお手伝いする、ギフトラッピングサービスをはじめます」

 

そんなメッセージから始まった、マガザンキョウトの物流特集。共同編集者は「日本の物流をカッコよくする」をテーマに掲げる、株式会社CAPES代表の西尾浩紀さんだ。

 

インターネットやスマートフォンの普及によって、どんどん大きくなっている通信販売という領域。その成長はコロナによってさらに加速し、物を届けるための“物流”はもう日常生活でなくてはならない存在になっている。

 

「早く、安く、正確に届ける」ということに重点を置いて育ってきた物流業界だけど、疲弊感が漂っているのはユーザー側からしても感じ取れる。そんな中で、マガザンキョウトとCAPESはこんなふうに問いを立てた。

 

「荷物を届ける人たちが生き生きと活躍して、受け取る人たちが最高に喜んでくれる。そんな物流をかたちにできないのだろうか?」

 

そうして立ち上がった二者の共同プロジェクトが、「物流に、文化を届ける」“メリーロジスティクス”。そのお披露目兼実験となるのが、今回の物流特集だ。

 

 

インタビューに訪れたのは、クリスマスの1週間前。

館内にはクリスマスツリーやさまざまにラッピングされたプレゼントの箱、そして中央にテーブルがひとつ。その周りをラッピングペーパー、リボン、ドライフラワーなど、あらゆる包装資材が色とりどりに囲んでいる。

 

今回の特集コンテンツは「ギフトラッピングサービス」だという。

ここに訪れた人は自分でプレゼントを持ち込んでラッピングをすることもできるし、ラッピングデザイナー・足立夏子さんにラッピングデザインをしてもらうこともできるのだそうだ。

 

「どうして『物流』特集で、ラッピングなんだろう?」

そんな問いが浮かびつつも、ユニークに包装されたプレゼントたちに囲まれていると自然と心が浮き立ってきた。今日は私も、大切な人に渡すためのプレゼントを持ってきている。インタビューのあとに、足立さんのラッピングワークショップに参加するためだ。

 

何かを送る、受け取る。その橋架けとなる「物流」。

なぜマガザンが今、それを特集に選んだのか。そして「物流に、文化を届ける」とはどういうことなのか?

 

クリスマス前、まるで発送を待っているようなプレゼントたちに囲まれながら、マガザンの岩崎くん、そしてCAPESの西尾さんにお話をうかがった。

 

人気がない、期待されていない「物流」

 

 

ーまずは西尾さんのことについてうかがいたいのですが、普段はどんなお仕事をされているんですか?

 

西尾(以下・西):「日本の物流をカッコよくする」というコンセプトで、3つの事業を行っています。

 

ひとつ目は、物流事業のコンサルティング。通販でポチったあとって、翌日に荷物が届いたりしますよね。実はあの「当たり前に荷物が安定的に届く仕組み」って結構難しくて、その支援をしています。

また、現在通販業界がどんどん盛り上がってきているのに対して、現場で働く人は減ってきている状況にあります。だから作業を自動化していこうというのが今のトレンドで、ロボットを導入したり、機械化するための支援を行っています。

 

ふたつ目は、人材育成です。今話した物流の課題を、外部に頼るんじゃなくて自社の中で解決できるようになってほしい。そういう人をたくさん輩出したいなという気持ちで、物流部署の社員さんに学びに来ていただく、アカデミーを運営しています。

 

でも物流って好きな人は好きなんですが、基本的にあまり人気がないんですよね。インフラ的な仕事なので、めっちゃ頑張ったとしても褒められることって少ない。給料も決して高いわけではないし、シフト制で忙しいし……みたいなイメージがある。

 

ーだから、「通販は盛り上がっているのに、人手は減っている」んですね。

 

西:そうなんです。でも実は、物流ってめちゃくちゃ難しくてかっこいい、素敵な領域なんですよ。それなのに悪いイメージがついてしまっているのがいやなんで、盛り上げていこうぜって思っているんです。

 

それを受けたみっつ目が、今まさにここでマガザンと一緒にやろうとしている、「物流に文化を届ける」メリーロジスティクス(以下・メリロジ)ですね。物流のブランディングをして、これまでのイメージを変えていく事業です。物流って素敵でかっこいいやん!みたいなことを発信していこうと思っています。

 

進む小口化、効率化。そして人材不足。

 

 

ー西尾さんはもともと、会社に勤めて物流のお仕事をされていたんですよね。独立した理由は何だったんでしょうか?

 

西:新卒で入社したのがショップチャンネルっていう通販会社だったんですが、1年目に物流部に異動になったところから、僕の物流の人生は始まります。会社が持つ大きな物流センターで働き始めたんですけど、結構おもしろいなと。自動化も進んでいるし、必ず結果が数字でわかる。成果がわかりやすく見えるので、楽しみながら働いていました。

 

自分で選んだキャリアじゃなかったけれど、おもしろい仕事に巡り会えたなと思いましたね。それから転職を重ねて、物流の知見を広げていきました。メーカー、通販、林業まで……物流って奥深いんですけど、だんだんパーツが埋まってきた。その集大成をやりたいなと思って、最後に工具通販のモノタロウという会社に就職したんです。

そこで、大きい物流センターを立ち上げるプロジェクトのリーダーになったんですよ。東京ドームふたつ分くらいの敷地に、ばーんと物流センターを建てて。

 

ーへえー!

 

西:そこには400人くらいのスタッフが働いていて、150台くらいのロボットが動いていたんですけど、いくらくらいの予算が必要でどれくらいの在庫が入るのかとか、全部設計するリーダーをしていたんです。センターを稼働させて規模を拡大させていく中で、多くの見学者の方にどうやって導入したのかを結構聞かれて。それだけ社会的に求められてるんだな、ということに改めて気がついて、ちゃんとご支援したほうが世の中のためになっていいんじゃないかと思ったんです。それで、辞めて会社を作りました。

 

ーなるほど。独立される前に集大成として、物流の効率化に貢献されたんですね。

 

西:効率化がこんなに進んだ背景は、やっぱり通販ですね。最近はコロナでさらに加速しています。

以前はお店に商品が卸されて、そこにみんな買いに行っていましたよね。そのころはスーパーに100本牛乳を送ればよかったけれど、今は100件のお家に1本ずつ牛乳を送らなくちゃいけない。つまり数自体は変わっていないのに、届け先が細分化されている。これを「小口化」といいます。それだけ人が必要になっているのに、人が足りない。だから自動化が進む。

 

ー小口化が進んでいるから、物流業界もそれに対応しなくちゃいけないと。

 

西:変化が大きい業界なんですよね。物流が主になることはないけれど、主である売り方が変わると、物流も変わらざるを得ないんです。

 

ーその中で、西尾さんが感じていた物流の課題って何だったんでしょう?

 

西:物流の領域って幅広くて、僕みたいな仕事をしている人もいれば、現場でフォークリフトに乗っている人もいます。だけど時代が変わって効率化が進み、人じゃなくロボットが現場を担うようになってきた。すると物流に求められる人材要件が変わってきて、プロジェクトを管理したり、ソリューションを導入できる人が必要になってきたんです。でも、そういう人が少ないんですね。なぜかって言うと、やっぱり業界が人気ないからだと思うんです。そういう人は物流じゃなくても活躍できるから、違う領域に行っちゃう。

だから、中にも外にも物流のおもしろさをアピールしなくちゃいけない。「来い!優秀なやつ」と思っています。

 

「物流ってめちゃくちゃブルーオーシャンやな」

 

 

ーそんな西尾さんとマガザンの岩崎くんが出会ったきっかけって何だったんでしょう?

 

岩崎(以下・岩):お互いに新卒入社で関西から上京したんですけど、住んでいる駅が一緒だったんですよね。

 

西:そう。出会いは河川敷です。

 

岩:マガジンハウスの編集部に西尾の同級生がいるんですけど、その草野球チームに助っ人で来てくれって言われて、そこで西尾に出会ったという。

 

ーへえー、そこから仲良くなって?

 

西:はい、そこからずーっと友達ですね。一緒に仕事するとか、全然なかったよな。

 

岩:仕事の話はするけどね。ずっと横でそれぞれの仕事を眺めていたって感じで。そんな中、昨年クマグスクと一緒にやったアートワーク塾に、西尾が生徒として来てくれたんです。その動機が「物流以外のことをやりたい」ってことだったんやんな。

 

西:うんうん。

 

岩:物流辞めて、かっこいいクリエイティブなことがしたいと。

 

ーえっ、そうなんですか! 独立もされていたのに?

 

西:そう。「物流、いつまで関わろうかな」みたいな時期があったんですよ。コンサルティングの仕事でお客さんが喜んでくれる手触りはあったけど、ずっとこの仕事の仕方でいいのかと。

 

岩:でも西尾の話をクリエイティブ側から聞いていると、物流ってめちゃくちゃブルーオーシャンやなと思って。むしろ物流にいたほうが、クリエイティブなことができるんじゃないかと。

 

西:そう言われたのを、めっちゃ覚えているんですよね。「物流いつまでやるかなぁ」って言ってたら、「いや、もったいないで」って。ブランディングとかコミュニティとかデリバリーデザインとか、物流でまだまだやれることあるやん、と。それを聞いて、物流領域に遊ぶ余地を見つけた感じで。それから、真面目にどうしていくかをふたりで考え始めたんですよ。

 

ー確かにメーカーや小売ではブランディングが進んでいるけど、物流のブランディングってあまり聞いたことないですね。安くて安全に届けば、どこでもいいかなと思ってしまう。

 

西:そうなんです。物流って基本、企業にとってはコストの部分なんですね。そこが膨らむと利益が減るから、使うペンも机もユニフォームも、事務環境全部安くすまそうとする、そんなロジックにまみれた世界なんです。だから物流倉庫って、薄暗くて埃っぽくて無機質なイメージがあるんですね。

でも、そこが人の集まる華やかな空間になれば、働きたいと思ってくれる人も増えるはず。そういうふうに認識を変えていこうっていうのがブランディングの目的であり、その切り出しとして機能しているのが、この共同プロジェクト・メリーロジスティクスなんです。

 

 

ーマガザンがこのプロジェクトをがっつり一緒にやろうと思ったのって、どうしてだったんですか?

 

岩:片手間で手伝って実現できる規模じゃないし、すごく育てたいなって思えるプロジェクトなんですよね。

そもそもマガザンには、「プロジェクトを通して小さく文化を創出していく」というミッションがあるんです。そのうちのひとつがメリロジなんだけど、まさに「物流に文化を届ける」というテーマの通り、物流業界にこそ文化を届けたいなと強く思った。ブルーオーシャンであるこの領域に文化をインストールできたら、もっと豊かになるはずだなと。だからがっつり一緒にやろうというのは、最初から思っていましたね。

 

「届ける」を豊かにするサンタデリバリー

 

 

岩:うちでもオンラインショップをやっているので、物流とは普段から関わっているんですよ。それでいつも、「送り主が直接会わなくても喜んでもらうには、どうしたらいいのかな」と考えているんです。物流って出会いの接点なので、そこを豊かにするサービスを作りたいなと。

 

それで、もっとも豊かな届け方をしているのは誰だろう?と考えて思いついたのが、サンタクロース。サンタをリアル社会に落とし込んだらどうなるか、っていう問いのもとにできたのがこの絵ですね。「サンタデリバリー」という、もうひとつのプロジェクトです。

 

 

ーサンタデリバリー。

 

岩:メリロジが「物流のブランディング」を担うプロジェクトだとしたら、サンタデリバリーは「届け方を考える」プロジェクトです。届けるって、もっと素敵なはず。たとえば、初任給でお父さんにネクタイを送る、そのプレゼントが他のものと一緒の届け方でいいのか。何を届けるかを配達員も知っていたほうが、届け方ももっと豊かになるんじゃないか。ラッピング、梱包、届け方まで、工夫する余地がありますよね。

 

ー確かに……そこに文化が生まれるのか。

 

西:今の物流って、とにかくコストカットして利益を出さないといけない、究極的に安くしないとっていう考え方なんです。でも、そんなだったら絶対に文化は生まれない。

 

たとえば現状、1時間に5,6個しか配達できないのに、配達員の取り分って1個あたり100円ぐらいしかもらえていないケースもあるんですね。ということは、数をさばかないと生活が成り立たない。すると回れど回れど稼げなくてイラつく。荷物を雑に扱う、負のスパイラルが起きてしまう。

 

それなら、1個あたりの配送の値段を高くすればいい。1個あたり100円を200円にするにはどうしたらいいのかを考えようと。なのでサンタデリは、大量の荷物をさばくことはまったくよしとしない。一個あたりのコストを超かけて、時間をかけて思いを伝える。「こんな届け方なら、1万円だって払うわ」と言ってもらえる届け方って何だろう?と考える。それがサンタデリバリーなんです。

 

ーコストカット主流だった物流にとって、新しい問いですよね。

 

西:メリロジも、サンタデリも、共通しているのは一般的な物流に対するアンチテーゼなんです。コストカットだけじゃ、やっぱり現場は疲弊する。それがすべての源泉なんですよ。そんなだったら物流はもたないよなと。

僕たちがやろうとしているのは、その世界観とは真逆のアプローチなんです。究極にコストと手間をかけた世界観を実現して、こっちはこっちでありだね、ともうひとつの仕組みを作りたいんですよね。

 

「届ける」の入り口、ギフトラッピング。

 

 

ーそして今回、マガザンにおける「物流特集」で行われるのが、ギフトラッピングサービスということですが……。

 

岩:はい。これまで言ったことのうち、まずは試せそうなことからやってみることにしました。小さな石を世の中に投げ込んでみる実験ですね。

 

西:最初は、物流のブランディングを物流業界の「中の人」に仕掛けていこうと思っていたんです。それこそユニフォームを変える提案をしたりとか。でも、既存の仕組みを変えるのはすぐには難しい。

そこで方向転換して、これまで物流に興味がなかった「外の人」に働きかけていこうと考えました。物流のサービスを使う側の人たちに、正しく情報を提供していこうと。中でもイメージしやすいものが、ギフトラッピングだったんです。

 

ー確かにキャッチーですけど、ギフトラッピングを物流ととらえたことはなかったので新鮮でした。

 

西:そうそう。身近ではあるけれど、物流とは捉えていない。でも、「届ける」という観点から見れば立派な物流のひとつです。ここを接点として、イメージを変えていこうと。仕組みを変えるのは難しいけれど、イメージならすぐに変えられるかもしれないから。

 

 

ーなるほど。具体的にはどんなことをするんですか?

 

岩:ここを小さなラッピングセンターにします。サービス内容は3つあって、ひとつ目が自由に資材を使えるセルフラッピング(500円)。ふたつ目が、ラッピングデザイナーの足立さんによるラッピング(1000円)。そしてみっつ目が、足立さんの超オーダーメイドラッピング(3000円)です。

足立さんはもともと生活雑貨のお店で働いていた方で、そこでラッピングのおもしろさに目覚められたそうで。それ以来、どこにでもある資材を使ってユニークなラッピングをされている方なんですよ。

 

ーへえー。セルフラッピングもあまりやったことがないけれど、オーダーメイドラッピングっていうのは初めて聞きました。

 

岩:足立さんは、ヒアリングから始めるんです。物が何か、ではなく、誰に贈るのか。その人はどんな人で、どんなことが好きで、何色が好きなのか。何の目的で、いつ、どのように渡すのか。それを書き出すことで、贈る相手のことをより理解するんですよね。それから、包み方について考えていく。

 

ーそれって、贈り物の本質ですね。そんなものをもらったら嬉しいだろうなぁ。

 

「作って捨てて」のスパイラルから逸するためには?

 

ーだけどラッピングって、そんなに意識したことなかったです。中身を出したらすぐに捨てちゃうもの、というイメージで。

 

西:その指摘はもっともで、包装紙も梱包材も捨てられる運命にあるんですよね。物流では、それがひとつの課題なんです。メリロジのスウェットのバックプリントのモチーフになっている気泡緩衝材が、まさにそれなんですけど……

 

 

ーあ、いわゆる「プチプチ」ですね。

 

西:そう。実は「プチプチ」って川上産業株式会社さんの登録商標で、一般名称じゃないんですけどね。

物流業界ではこういう気泡緩衝材やダンボールといった、梱包資材の持続可能性も課題のひとつなんです。回収してリサイクルしたいのだけど、その回収がうまくできない。捨てるほうがコストが低いからです。じゃあせめて、すぐに捨てられないようにするにはどうしたらいいか? 業界的には、そこに課題感を持っている方がたくさんいるんですよね。

 

ー「捨てる方が安い」。ここにもコストカットの考え方が根付いてしまっているんですね……。

 

西:そこで僕らが何ができるかなと考えたら、たとえば包装に気持ちやデザインを込めることで、捨てられないラッピングができるかもしれないなと。「これはいい箱だから置いておこう」「あの人が包んでくれたから置いておこう」という気持ちにさせることができるかもしれない。

 

岩:そういう意味でも、このラッピングセンターの梱包資材には、サスティナブルなものと新品のもの、両方を用意しています。

サスティナブルな方は、共同印刷工業さんという印刷会社さんが持っていらっしゃる、すごく良い素材なのにテストプリントで捨てるしかない紙をいただいて、ラッピングペーパーにしているんです。あと、有名なアパレルメーカーの高品質な端切れ布をいただいて、それを緩衝材にしています。

一方で新品の包装紙には、「これは捨てたくないな」と思ってもらえるくらいのかわいいオリジナルデザインを施しました。

このふたつが、今の課題に対してラッピングの世界でできることだなと思っています。

一通り自分でやってみると、気づきがたくさんある

 

 

ー包装ってお店の人がやるイメージだけど、自分でやってみるとより自分の思いを乗せられそうですね。

 

西:そうそう。「物を買って、ラッピングして、届ける」ってことをひとりでやってみると、気づく事いっぱいあると思うんです。今は分業化が進んでいるので、物流ではこの荷物が誰に何のために送られているのかを誰も知らないんですよね。それはそれでいいんだけど、僕らは「それでいいんだっけ?」と思い続けていたいんです。

 

物流って、時代を紐解いていくと、過去に粋なことしているんですよ。たとえば江戸時代の飛脚って、物を届ける前にちゃんと身なりを整えるんですって。それって、江戸に出稼ぎに行った主人の無事を、嫁子に伝える役目も担っていたからなんですよね。

でも今は、配達員が軒先で世間話とかしないじゃないですか。分業が進んでいる分、ウェットなコミュニケーションは削ぎ落とされている。だけど、物流が届けられるのは物だけじゃない。人の気持ちもちゃんと届けられるぞというのを伝えたいですね。

 

ーそのスタートが、この特集なんですね。

 

岩:で、この特集は1/11までなんですが、次のステップも用意しているんですよ。3/6に、旧クマグスクの跡地に小さなラッピングセンターを作る予定なんです。

 

西:このセンターは、特集でやっている「ラッピングセンター」という機能がひとつと、あと「CtoCの物流センター」という機能も持たせようと考えています。

 

ー「CtoCの物流センター」?

 

西:今、世の中の物流のほとんどがBtoCなんですね。つまり企業から個人に送るのがほとんどで、そのインフラは整っているんです。だけど、これからはCtoCの物流もますますさかんになってきます。ヤフオクとかメルカリとか、個人間の商品売買が増えているんですよね。

 

ー確かに。

 

西:物が売れたら、相手に送りますよね。でも、いい具合の箱がないとか、それこそプチプチがないとか、写真がうまく撮れないとか、そういう問題ってないですか?

 

ーありますあります。慣れていないと大変ですよね。

 

西:そういうふうに、CtoCの物流って何のフォローもされていなくて課題がたくさんある。だからそれを解決する場所を作りたい。ここに来るといい感じの梱包材が見つかるし、撮影もできるし、発送もできるし、それこそプチプチの再利用をしてもいい。「マイクロ物流センター」って名前にして、個人間の物流を支える場所にしたいなと。

 

ーどんどん小口化されている時代、持続可能な方法が見直されている時代に沿ったアイデアですね。

 

岩:そう、ブルーオーシャンだから素直にアイデアが出るんですよね。

 

西:それをうまく仕組み化したい。「ギフトで思いを届ける」「CtoCのサポートをする」この機能を持たせたセンターにしたいですね。

 

パソコンでポチって終わりの世界観の、真逆を提案している

 

 

岩:展望ついでにもうひとつ言うと、その後の「届け方」を豊かにする……サンタデリバリーについても今具体的に動き始めているところです。

 

西:ラッピングにどれだけ思いを込めても、配送員に渡った時点で、一旦思いが途切れるんですよ。じゃあ思いも一緒に届けるにはどうしたらいいか。それをまずは法人向けのサービスとして始動できないかなと考えました。

 

この間ある企業さんに提案したのが、「ロイヤルカスタマーに、特別な感謝の気持ちを伝えませんか」というサービスです。たとえば僕たちがその企業の代わりに、ロイヤルカスタマーのもとに感謝の気持ちを込めたプレゼントを届けに行く。そこでコミュニケーションをとって、普段聞けないことも聞いてくる。

でもそんな提案をしているうちに、「あげるものも、もっと特別なものにしたいな」というお話をいただいたんです。どこどこの企業とコラボレーションして、ロイヤルカスタマー向けのお礼の商品を開発したいっていう。

 

ーへえー! 届け方だけではなく、届ける物まで一緒に考えることになったんですね。

 

西:そのコラボの話を僕たちがまとめたり、パッケージデザインやラッピングを請け負ったりと、実際に形にしていっています。今度、社長と一緒に届けに行くんですけどね。

 

ーすごいですね。贈り物にこんなに労力をかけるって、かなり贅沢なことですよね。

 

西:かなり贅沢なことです。パソコンでポチって終わりの世界観の、真逆を提案している。でもこういう話をしたら、共感してくれる人めちゃいるんですよ

 

岩:たとえばプレゼントキャンペーンをしたとしても、お客様に商品を郵送するだけで、本当にブランドの思いが届いているのかな?と考えている企業さんは実際多い。じゃあそのキャンペーン予算の10%を「物流」にまわしてみませんか?って提案したら、とても反応がいいんですよ。

 

ーもともとそこに課題感があったんですね。

 

岩:オンラインショッピングは増えているけど、ブランド体験は本当に届いているのか。最後のお客様との接点は配送会社に丸投げ状態だから、ここにブランドの分断があるんです。僕たちは「届ける」ということをないがしろにしてしまっていませんか?とメッセージを投げかけていく役割を感じています。

 

みんな、もっと相手のために時間を使おう。

 

 

ー最後の質問ですが、このプロジェクトを通して実現したいことはなんですか?

 

岩:うーん……最終的にはこの絵を実現させることですけど、要は「幸せになりたい」ってことなんじゃないですかね。「豊かになりたい」ってことかな。

 

西:そうですね。何年かかるかわからないけど、今のマジョリティ物流に対するこのアンチテーゼを、いつかメインにしたいなと思っています。

 

今って、時短時短じゃないですか。洗濯機やら電子レンジやら、前の製品に比べてこれだけ時短できます!みたいな世の中だけど、「みんな時間あるやろ?」って思うんですよ。ゲームしている時間があったら、相手のことを考えようぜと。相手のために時間を使うということが当たり前になってくると、「届ける」ことをもっと考えるようになるんじゃないかな。

 

ー岩崎くんの言った「豊かになりたい」っていうのは、西尾さんの言う「相手のために時間を使う」ことで、実現できることなのかもしれないですね。

 

 

ふたりの話を聞きながら、自分がどれだけのことを人に任せてきたのかを考えていた。

たとえば誰かにプレゼントを送るとき、インターネットで検索してショップを選び、情報を入力し、決済をする。私の仕事はそこまでで、「届ける」ことは全部人任せ。

だけどそこにもっと思いを込めることができたら、プレゼントという体験はより双方にとって豊かになるんじゃないだろうか。それこそ、ずっと記憶に残るほどの。

 

そんなことを考えつつ、午後から行われたラッピングデザイナー・足立夏子さんのワークショップを受ける。私が持ってきたのは、長男へのクリスマスプレゼントだ。彼が欲しがっていたゴム銃というおもちゃ。Amazonで買ったものだが、それを自分でラッピングしようと向き合うと、すでにその物の持つ「プレゼント」感が強くなっているようだった。

 

足立さんが配る「ラッピングカルテ」に、長男のことを書き込んでいく。相手が好きな色は? 好きなものは? 特徴は? 伝えたい想いやメッセージは? 渡す日・渡すシチュエーションは?

書き込むうちに、自分が人に任せてきたことを取り戻していくような気持ちになった。

そうか、「物流」にはこんなに想いを乗せられる余地があったのだなと実感する。

足立さんに教わりながら、さっそくラッピングに取り掛かった。

「思い切りクリスマスを楽しんでほしい」

そんな思いで、緑と赤でカラーコーディネートし、大きなリボンをつけた。彼がいつか、子供のころのクリスマスを回想したとき、豊かなものであってほしい。そんなことを考えながら。

 

「物流に、文化を届ける」

物流とは、単に物が流れることではない。本質はきっと、人と人をつなげ、想いを届けることなのだろう。

できあがったラッピングを見ながら、そんなことを思った。文化はきっと、想いの中で生まれる。私のクリスマスプレゼントが、今日1日をかけて特別なものに生まれ変わったように。

 

プロフィール

西尾浩紀

1985年兵庫県生まれ。関西学院大学商学部卒業後、ジュピターショップチャンネル株式会社入社。 経営企画部での分析業務や物流センターにおいて荷主として3PL事業者との折衝を中心に業務。その後アビームコンサルティング株式会社に転じ、物流領域を中心としたコンサルティング業務に従事。 製造業や卸売業を始め林業に至るまで幅広いジャンルのプロジェクトを経験。​2015年からは株式会社MonotaROにおいて自動搬送ロボットを始めマテハンを多数導入した物流センターの 新規立ち上げプロジェクトのマネージャーとしてプロジェクトを指揮。トラブルなくスムーズな立ち上げを実現。​400名規模の物流センターの責任者としてセンターマネジメントを経験した後、2018年7月株式会社CAPES設立。 物流現場へのロボット導入やマテハンの導入、新規拠点の立ち上げについて深い知見を有しており 現在新センターの立ち上げプロジェクト支援や、ロボット・マテハンの導入アドバイザリー業務を中心に 物流企画人財の育成を目的としたセミナー講師やアカデミーの運営を行うなどの活動をしている。

 

株式会社CAPES

MERRY LOGISTICS