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第2回 京都の街の、音を読む。 「ジェイアール京都伊勢丹」〜「キョウトニイッテキマシタ」に寄せて〜

 

先日マガザンの岩崎君に、「壁コラムを連載しないか」と誘われた。それでどういったものを書こうかと数日考え、「心から好きな場所について書こう」と思った。京都には特に音楽が流れていないのに、独特の音楽を奏でているような場所が複数ある、と思う。その音楽は、そこ以外では決して聴くことができない。この連載ではそういった場所について書いていこうと思う。

京都の街の、音を読む。 第2回「ジェイアール京都伊勢丹」〜「キョウトニイッテキマシタ」に寄せて〜

デパートを訪れることは、旅に似ている。
インターネットを使えばクリックひとつで買い物ができ、家まで商品を届けてもらえる今の時代、わざわざデパートへ出かける必要はほとんどない。それでも私たちがデパートに足を運ぶのは、デパートを歩くことが旅先で歩くことと同じだからだと思う。旅は、知らない世界を体験すること。自分の世界を広げることだ。

デパートに並べられた「物」は、インターネット検索で最安値をたたき出し段ボール箱で送られてくる「物」とは、同じ「物」でも全然同じではない。

きちんとレイアウトされた陳列棚、よく磨かれた鏡、代金を載せるための黒いトレイ、そしてそれをうやうやしく受け取り、きれいに包装した商品を手渡してくれる店員さん。デパートでは、「物」がとても大事にされている。

各フロアで大事にされている「物」を見、触れていくと、まだまだ自分の知らない良い「物」が、この世界にはたくさんあるのだなあと感じる。そして、何だか人生が良いもののように思えてくる。そういう点でデパートを訪れることは旅に似ているし、そういうわけで私はデパートが好きだ。

京都にもいくつかのデパートがあるけれど、京都駅にある伊勢丹は、その中でもひとつだけ違うというか、独特の雰囲気がある。四条にある大丸も、河原町にある高島屋も、それぞれ旅先という感じがするけれど、ジェイアール京都伊勢丹は旅先というよりは空港に似ている。

京都駅という場所柄、ここでは京都観光に訪れた人の方言や母国語、さまざまな土地のさまざまな言葉が特によく聴こえてくる。ただ不思議なことに、そういった無秩序で雑多であるはずの音が、ここではなぜかフラットに、整然としているように聴こえる。ざわめきの底に、明るい旋律の反復が、穏やかに流れているような。

それは、このデパートの内外にまっすぐで大きな階段があるからかもしれない。屋内には各階の売り場を貫くエスカレータ、屋外には四階の広場から最上階まで続く大階段がある。どちらも螺旋状になっていない、一方へと続く階段で、上り続けると最後には屋上に出る。私たちは、最後に何にも邪魔されない大きな空の下に出る。私はジェイアール京都伊勢丹のこの規則的で開放的なつくりが、京都に来たときからとても好きだ。

ジェイアール京都伊勢丹は、日常と非日常のあいだにある。京都に来たとき、そして京都から帰るときに立ち寄る場所。ここで、私たちは特別な「物」に出会う。これからの旅をより鮮やかに彩る「物」に、そして、これからの日常をより豊かに彩る「物」に。

このデパートはまるで空港のように、さまざまな土地のさまざまな人、みんなに開かれていてやさしい。

ジェイアール京都伊勢丹
住所:〒600-8555 京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町
TEL:075-352-1111(大代表)
営業時間:午前10時~午後8時

書き手:土門蘭
1985年広島生、京都在住。フリーペーパー『音読』副編集長。
「京都の音楽を、読む」をコンセプトに2010年『音読』を創刊。京都の音楽文化を軸とした、様々なカルチャーを紹介している。

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